「殿様の通信簿」 磯田 道史
2011-01-28


禺画像]
昨年度ベストワンの「武士の家計簿」の著者が書いた本だ。

学者は細かい事実を積み重ねて、確実と思われることを書く。小説家は面白い物語を綴る。では、古文書から事実を拾い上げて、これほど面白く記述する著者の才能はなんなんだ。

元禄の頃の「土芥寇讎記」という文書がある。「どかいこうしゅうき」と読むらしい。各大名の性格や暮らしぶりを書いたもので、隠密が集めた情報をまとめた秘密文書、という説もあるとのこと。
著者は、こういう文献などを駆使して、よく知られた歴史上の人物の実像に迫っていく。浅野内匠頭と大石内蔵助、加賀の前田家のお殿様、などなど。
それぞれの人物の性格や生きていた時代の気風、それらを実例を挙げながら丁寧に描写していく。それらは、予想外でありながら、説得力がある。

全体の統一感がないということが欠点と言えば欠点だが、いくつもの読み物を集めた、と思えば逆に読みやすい。そういえば、表紙裏の紹介文には「歴史エッセイ」と書かれている。

「武士の家計簿」同様、読んで損のないお薦め本である。

(新潮文庫 2011年1月25日発行 476円+税) アマゾンへのリンク禺画像]
[日本小説以外]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット